新作TCG初見レビュー:ダンボール戦機LBXバトルカードゲーム

 「ダンボール戦機LBXバトルカードゲーム」(本レビュー文中ではダンボール戦機TCGと略称)についてはちょこちょこと、発売後から少しづつ買い続けてました。
 最初は様子見……というか内容確認の為に試し買いのつもりでしたが、子供向けキャラクターゲームと考えるには惜しい程に高いゲーム性が垣間見える内容で、ついつい買い足し続けてしまいました。気付けば今や、第一弾のカード一揃いコンプまであとカード数種という引き込まれっぷり。個人的には、2011年前半期の新作TCGタイトル中でイチ押しの期待作!という評価です。

タイトル名 ダンボール戦機LBXバトルカードゲーム
メーカー バンダイ
  【公式サイト】 http://www.carddas.com/lbx/
発売時期 2011年4月下旬
商品構成
スターター 【エントリースターター】2種類 税込価格:945円
   ■エントリースターター『LBXアキレス』(D-S01)
   ■エントリースターター『LBXハンター』(D-S02)
   カードデッキ30枚+オマケカード1枚(スターター専用カード9種・全17枚)
   および、対応LBXの必殺ファンクションのリスト・ルールマニュアル・遊び方マンガ・両面印刷のプレイシート、が付属
ブースター 【ブースターパック】 カード6枚入り 税込価格:158円
  【(カードダス)自販機ブースター】 カード4枚/100円
   第1弾(D-01):全95種
   ノーマル(N)45種 レア(R)30種
   スーパーレア(SR)14種 ウルトラレア(UR)6種
その他 【ウエハース菓子】 カード1枚付属 税込価格:105円
   封入カードは全20種(包装裏面にリスト有)、うち10種(SR6種/R4種)は専用カード。他の10種は第一弾セット中のレア(R)カード再録
サプライ 【デッキケース】 レアカード2枚(内容固定)付属 全3種類
  ※カード内容は「D-01-06 アキレス」と「D-01-69 勝利への一撃」のイラスト違い
ユーザー分析
各レアリティ個別カード出現比 (注意:まだ箱買い等で確認していないので経験からの推測値です)
  【ブースター商品】だいたい N4.3:R2.5:SR1.3:UR ぐらいと予想中
ゲーム用フルセットの予算期待値 (注意:同上の理由により、推測値の計算です。目安程度にどうぞ)
  ブースター商品より各カード3枚セット≒約2万円(6,7BOXぐらい?)
  スターター専用カード各種を3枚揃える:全2種×各3個×945円=5640円
  【小計】 約2万5千円
収集し易さ評価 【ランク:Aマイナス】
  おおむねポケモンカード並みのとはいかないがそれに準ずるレア出現率で、子供のお小遣いにも比較的優しい。
  予想されるコンプ予算総額も、菓子オマケを除けばTCGではかなり割と安いほう。
  それでいて、レアリティ毎に入手比率差が階層で分かれており、適度な強さにデザインもされているため、シングル/トレードの需要や価値は高いと思われる。
事業情報
関連メディア 提携雑誌:コロコロコミック
  原作:PSP用ゲームソフト「ダンボール戦機」(製作:レベルファイブ) 6月16日発売予定
  アニメ:4月よりテレビ東京系で毎週水曜19:27〜にて放送中
デザイナー 【製作スタッフ】
クレジット ゲーム製作:久保光司(2D6G)
  グラフィックデザイン:野口剛、磯脇剛彦(水野プロダクション)
  商品担当:西澤清人バンダイ
  原作・監修:レベルファイブ
  ※「ルールマニュアルVer. 1.0」より
  • ゲームの概要

 原作のPSPゲームやアニメの世界観を踏襲して、ダンボール戦機TCGも「LBX」と呼ばれる子供用のロボット玩具を戦わせるバトル、を主軸にしたカードゲームになっています。このTCGのカードタイプは2種類。戦いの主役であるLBXカードは、同じロボットでも武装や【必殺ファンクション】(必殺技)毎に多数のバリエーションが収録されています。もう一つのカード種類はサポートカードで、劇中に登場した登場人物や名シーンをあしらったバトルの補助効果を表しており、約半分は特定のLBX専用に設計されています。これらのカードで30枚のデッキを作り、勝負する訳です。

 各プレイヤーは毎ターン、手札から1枚のLBXカードを出してバトルを行います。ターン中のステップ進行に応じて各種の効果やボーナスを得るタイミングはありますが、基本はお互いのLBXのBP(バトルポイント)を比べて勝負を決めます。バトルに勝った側はそのLBXカードを自陣の【チャンスゲージ】へ、負け側は自陣の【レベルゲージ】へと置きます。
 また負けた側のプレイヤーはダメージ(基本値は1点)を受けて、その分だけ山札からカードを捨て札へ廃棄します。山札切れとなったプレイヤーがゲーム敗北……というこの「ライフ=山札」式システムは、デザインチーム2D6Gが長年「ガンダムウォー」「クルセイドシリーズ」などのバンダイTCGで扱ってきたルール様式で、本作のゲーム設計でもゲーム性の練り込みが顕れている部分だと感じます。

 各ターンでLBXによるバトルと勝敗を繰り返す事で、双方のプレイヤーの盤上では先述の2つのカード置き場にカードが溜まってゆきます。このうち、バトルに負けた際にLBXが置かれる「レベルゲージ」のカード枚数(Lv)は、そのプレイヤーの戦力に直結します。ここのレベル数を基準に各LBXカードのBPが算出されますし、サポートカードには使用条件として必須レベル数が定められています。言い換えればバトルに負ける度に、そのプレイヤー陣営にはハンディとしてボーナスが付く、というところでしょうか。

 しかし基本1点ダメージをレベル差や補正で競り合うだけでは、毎ターンが単調な押し相撲になってしまいます。だいたい山札が残ライフなので、1枚手札を追加ドローすればそんな僅差は消えてしまう……ここでバトルに勝つことで溜められる「チャンスゲージ」の出番です。
 一部のLBXカードには「必殺ファンクション」という特殊能力が備わっており、コストで指定された属性と枚数だけカードをチャンスゲージから捨て札にして、そのLBXBPブーストダメージ値アップ/更にはテキスト効果の発動など大きく強化することができます。必殺ファンクションはどれも大技で、使用できるチャンスは案外限られています。この(格闘ゲーム風に言えば)『ゲージ消費の超必殺技』を、1ゲーム中での使いどころを考えて勝負どころに注ぎ込む!のが本作での戦略の要のようです。
 また基本的にコストの一部は「バトル中のLBXと同名のカード」で支払う必要があるため、デッキ中カードはパワー優先のジャンクではなく、ある程度は特定のLBXで固めたキャラクターデッキ戦略を組むのが推奨でしょう。スターター2種の内容も主人公(バン)と親友(カズ)のLBX「アキレス」「ハンター」単独で固めた構成ですし……それぞれに1枚入っている専用のおまけカードが、相方ロボの専用サポートというのもニクい趣向。初級ゲームに慣れたら、二組を混ぜてコンビチームデッキを組むのも練習にいいかも。

  • 単純なルール、深みのある戦術

 LBXカードは基本的にLv.0でのBP最低値は必ず持っていますが、他のレベル域での強さは単純な上昇線ではありません。例えるなら、バトルスピリッツTCGのスビリットLv/必要コア/BP関係のように。カードにより閾値がまばらだったり、平均(だいたい1000+200×Lv)値に対して得意・不得意なレベル帯があったり。引いた手札を見ながら、この辺を考慮して最適なレベルとゲージの溜め方を考え、相手の動きを読みながら勝負時を見計り……
 カードゲームに慣れた人はピンと来るかと思いますが、トランプゲームっぽい駆け引きの側面を本作は強く持っています。全体を俯瞰すれば『手札から1枚づつカードを出してバトルさせる』という単純かつ直感でわかりやすいゲーム進行に、山札やドロー周りの資源運用、外枠としての環境や戦略のバランス設計などを加えて、色々と考えどころのあるTCGに仕立てた良作といえるでしょう。こういうポーカー的なバトルゲームは、バンダイ製品も含め過去に多くの類型があるTCG/CCGデザイン様式ですが、本作「ダンボール戦機LBXバトルカードゲーム」はシンプル&分りやすさがかなり洗練されている印象が強いです。(注:もっとも、ルールシートでの『先行/後攻』概念のあと付け感や、フローチャートの図面など、説明文中ではやや微妙に感じる点も若干見受けられますが

 もちろん全てが読み合いやインタラクション、というガチガチにタイトな対戦ゲームではなく、適度に運やパズル的なゲーム要素もあります。バトル中に行う、山札の一番上をめくり出たカードのBP修正を加算する「アクション判定」は、ここぞという時の競り合いで意外と重要ですし、山札/捨て札リソースとも関連する戦術用途の広さが期待できます。総デッキサイズも30枚と少ないなかでデッキのLBX選択を絞ると、相性やバランスを考慮した戦略選択や構築は、悩ましくもまた楽しいTCGならではの面白さを提供してくれそうです。

 総合的に見て、2011年前半(1〜6月)期中の国産TCGのなかでは、初心者へのわかりやすさ十分な戦略要素とゲーム性既存TCGとの差異や革新性題材のコンテンツ話題性など、バランス良く高スペックを備えた期待の新作だと思います。「ヴァンガード」(ブシロード)の運ゲー部分や、ファイナルファンタジーTCGホビージャパン)の複雑なデッキ構築にはちょっと……という人には格好の代替案な特長でもありますし。

  • 『集めやすいレアゲー』

 あとはゲーム内容「外」の部分で所見を少しほど。

 個人的にダンボール戦機TCGに目を惹かれた最初の部分は、ブースターパック商品について広告段階から「キラカード2枚入り!」と書かれていた点でした。1パック約150円でカード6枚入り(単価25円/枚)の商品で2枚のキラ/レアとは相当な大判振舞い……TCGによっては『必ずしも1枚入りと限らない』が普通な水準の価格設定で、コレ。原作ゲーム/アニメの対象層中心、小学校低学年前後の子供に向けて強気なアピールだなぁ、と思ったものです。(加えて言えば私は、そういう販売攻勢をかけるようなキャラゲーがこれ程ゲームデザインも優れている…だと…!と驚いてハマったので)

 ブースター6枚のうち、確かに2枚は『キラカード……R以上のレアリティを持つカードが封入されています。ただRは表面のビニルに加工を施した「ラメ」相当のもので、紙自体に反射素材を入れた「フォイル」のカードはSR以上です。出現率でもRは割と集めやすいので他ゲームのアンコモン相当、希少性の意味でキラカードと呼べるレアはSRやURという感覚でしょうか。とはいえ光ってるカードは何にせよ引けば子供心には嬉しいもので、レビュー冒頭のデータ表にも書きましたが、なかなか収集欲の足元を見たうまいやり方です。

 バンダイTCGブースター/カードダス商品でのラメ加工カードの封入率をアピールしたのは「ガンダムバトレイヴ」(2007)以来、と記憶しています。あの時はブースター200円6枚入り(2枚キラ)、カードダス100円3枚入り(1枚キラ)だったので、前よりもやや安価にはなっています。バトルスピリッツ以降の同社TCGでは、再録セットやプロモカードやお菓子オマケ品などでのコレクター価値差異化にラメ加工が施される機会が昨今増えていました。ダンボール戦機の場合でも、お菓子付きプロモカードでラメ加工のデザインがパックと異なっていてなかなか素敵です。
 ただ今回ダンボール戦機LBXバトルカードゲーム」では明確に、比較的入手容易なラメカードまで含めて、レアリティに準じたカードパワー差異を明示してきた感がします。単なるバリエーションではなく『光ってレアなカードはきちんとワンランク強い』というセット傾向といいますか。商品付属のカードリストにも、レアリティ表記と共にLBXカードの必殺ファンクション有無が併記されてますが、基本的にSR中心に分布しているという(笑)。一方でRは、各LBX毎の戦略を支えるユーティリティカードが多いです。

 TCGに対する一般的な(現役プレイヤーに限らず)一つのユーザー心情として『金がかかる≒レアゲーは嫌』という図式があります。プレイヤーの技量以外に、所持カード資産によってゲームや競技の勝敗が付くのはアンフェアだ、という観点でしょうか。もちろんTCGゴロの悪癖とも言える「フルコンプしてからゲームスタート」が正しいとか強弁する気はありません。しかし長年TCG/CCGやっていて(おそらくどのゲームジャンルでも)気付くのは、きちんと「カードの収集に応じてゲームへの理解や技術を深める人もいる」という点です。そう考えると理想的には、遊ぶのが楽しくて、ついつい自然に買い足していったら気付くと全部揃ってた……状況に導いてくれるTCGが望ましいですが。
 しかしこの際に重要なのは、その『ついつい』が終局的にどの程度の予算を計上するのか、の部分だとも言えます。『ついつい』という言葉は『自覚しても止め難い』の裏返しであり、ゲームを止めた後にTCGへ悪感情を抱き続けている人の多くは、その自己制御や消費誘導に不遇か疑念を強く意識しています。
 しかしゲーム自体を安くすればいいのか……これには安易な模索への現実的な問題があって。つまり集めやすく安価なTCGは、一般的に小売店やカードショップに好まれないという(笑)。消費の上限が近ければ商品取り扱いでの利益に天井があり、皆が手元に揃えてるならシングルカードも売れない。特にTCGショップ側が強欲なわけではなく(と思いたい)、大半の店はこの綱引均衡に負担をかけず新しい消費客層を開拓できるならそこを重視する(と信じている)のですが、どんな営業アプローチも初動の集客においては誰かが身銭を切る必要がありますし。

 ダンボール戦機TCGの今後はまだ見通し不透明ですが。このジレンマに一石を投じるかもしれない、面白いビジネスモデルの試みとも取れる商品構成をしており、私は他のゲームと比べてその点に作為めいたものを感じます。原作コンテンツの世評から、今後の子供客層の自然流入を相乗りで(あくまで「期待」ですが)期待できますし。入手容易なカード(ノーマルやスターター)がそこそこ強くゲームも優しく、プレイヤーの新規参入は障壁が少ない。一方でレアカードはどれも総じて使い勝手が良く強く、短期的には割合と高い収集需要が、中期的には売買サービスの流通を介したプレイヤー層の拡大が期待できる。
 まだゲーム事業は始まったばかりですし、子供対象商品ですから世評に上るのもまだ先々のことでしょうが、新製品なりの好条件とそれに歩調を揃えた好材料が見受けられます。自ら潜在プレイヤー層を発掘する意欲のあるカードショップがこういった商品を広めてゆく過程で、世間でのTCGに対する反感イメージが改善される一助が生れないものか……と、この分野のジャンルゲーマーとして考えている次第です。
(2011/5/22 レビュー本文投稿)
 書き終えて、ちょっと後半部分を余計にグダグダ書きすぎたかな……とやや反省しています。レビューの政治性は意図した点なので作為を否定はしませんが、もっと手短な話にまとめるべきだったなぁ、という。それはさておき。
 レアリティ関連でひとつ書き忘れてた点があったので、余談として追記しておきます。上記の『集めやすいレアゲー』の話は主に収集過程を経過するユーザーをモデルに想定した話です。数BOX単位で注文入れてガッと買うような競技的TCGプレイヤー/コレクターにとっては、終端の『結局はレアゲー』感触が強まる結果になるでしょう。総じてキラカードの方がBP水準で少し高性能なので、勝敗重視でカードを取捨選択してゆけば自然とデッキも半分方はギラギラした構築に固まる、のは目に見えてます。
 大人の財布で全部揃えてしまうと逆に遊びどころが減ってつまらなくなる……収集半ばのゲーム過程を楽しむタイプのTCG、というニオイは私も気付いてます。子供の遊び場のなかでは、そういう側面は自然に調整されるものですし、ダンボール戦機TCGはそこで『ゲーム上手い子とお小遣いの多い子がイーブンに戦える』カードゲーム、にバランス調整されてる気はします。お小遣い多くてゲーム上手い子供がいたら……まぁ、その子こそクラスのトッププレイヤーになるべきじゃないですか!(笑)
 十分数のプレイヤーが集う場があれば、そうしたゲームは大会や初心者向け体験デモなどを通じて遊びの輪を広げて行けますが、それはちょっと先の話になるでしょう。その辺を考えて、私は今のところキューブドラフトに人を誘って遊ぶのを中心にプレイする計画でいます。周囲の状況や主ユーザー層との年齢のギャップを考えると、他に身近なプレイヤーを探すのも現状では大変ですし。
(2011/5/23 末尾部分を追加)