VSシステム東方セット第2弾プレビューその1「魅魔」「jigoku」

 まだVSシステム東方セット第2弾「フラワーマスターの逆襲」の制作は準備中の段階です。セットデザインの構想は第1弾の制作中に固まっていましたし、幾つかのカードの内容はその時点で確定していましたが、とにかく多忙のため作業に専念できる時間が取れないので、実際のカードの制作までなかなか漕ぎ着けない状況が続いています。あと残すところカード数枚というところなんですが……8月末までにはカードデザインを決定して、実制作に取り掛かりたいところです。


 さて、第2弾「フラワーマスターの逆襲」では以前からセットデザインにおける挑戦として「構築済み・導入用セットでオフカーブデッキを作る」という課題を考えていました。
 VSシステムの基本戦略は各コストのキャラクターを毎ターン一人づつ出してゆくカーブデッキですが、人によってはむしろ最初に毎ターン複数のキャラを展開するオフカーブデッキの方がゲームの導入に優しいのではないか、という疑問が私にはありました。はじめてオフカーブデッキ(GLEEストールでした)のプレイングについてのVSプロプレイヤーによるレビューを読んだとき、そのプレイヤーは次のようなことを言っていて、私はその発想に唸らされVSシステムのゲームの奥深さに感心したものです。
『私はいつもオフカーブデッキをプレイしている。なぜかというと、オフカーブならキーカードをゲーム中のいつに出しても基本的に問題はないが、カーブデッキをプレイしているとカードの引きが悪くてカーブアウト(そのターンに出す予定のキャラクターが出せないこと)してしまったらそれでおしまいだからだ』
 オフカーブデッキの動きのフレキシブルさは、ゲームの定石がまだ身に付いていない初心者にとっては別の方向性からの遊びやすさを提供できるはずだとそれ以来考えていました。そこで東方VS第2弾の二種のデッキのうち、妖怪軍団連合デッキについては、オフカーブデッキにすることに決めたのです。
 というわけで、次のセットの妖怪軍団デッキは、原作の1,2面ボスやステージ中ボスを務めるような弱小妖怪・妖精たちが大挙して大逆襲!というイメージです。しかし実は、その烏合の衆を独自の計画に基いて裏で操っているのは大ボスクラスの2人で……という趣向でデザインしています。


カードの種類:キャラクター
カード名称:魅魔/悪霊
コスト:6
チーム:幻想郷
潜伏有無:可視のみ

飛行、レンジ
ATK:12
DEF:12

テキスト:
 予備軍
 あなたが5体以上の幻想郷のキャラクターをコントロールしているとき、魅魔リクルートするコストは2減る。
 復讐:魅魔がスタンするたびに、あなたの他の全ての幻想郷のキャラクターの上に+1/+1カウンターを1個づつ置く。

フレーバーテキスト
 「出来の悪いお前たちにしては、よくしでかしたな。褒美に何か粗悪品を与えよう」

カードナンバー:TPJ-055 イラストレーター:白日


 これが第2弾の魅魔のカードです。見てのとおり、オフカーブデッキで最大の効果を発揮するカードとしてデザインされています。魅魔の能力の恩恵を最大限に得るためには、4〜6ターン目には5体のキャラクターを展開できるデッキでなければなりません。必然的にキャラクターは1〜3コストが多数、という構成になりますし、そうすると他のキャラに+1/+1カウンターを置く能力もより効果的になるのです。
 ザコ軍団デッキの2人のボスはこのように他の多数のキャラを利用して戦うカードとしてデザインされています。しかし実は2人とも全く正反対の戦略を志向していて、デッキ戦略を複数提供するように考えてあります。デッキ内には同じカードでもどちらの戦略で使うかで、全く働き方が違うものもあるのです。


 VSシステム東方セットの第1弾はなるべく知名度のあるキャラによるオーソドックスな構成を目指しましたが、もし第2弾以降を作れるのなら東方シリーズの旧作を含む広い範囲からなるべく多彩なキャラクターを徐々に収録していきたいと考えていました。そうしたほうが世界観を表現することによってVSシステムのゲームデザインの長所にも合致しますし。
 とんなわけで、シリーズ第一作のボス敵として登場し後に自機キャラクターの一人となった魅魔は、東方の旧作世界を代表するキャラとしてぜひ大きく取り上げたいと考えてはいました。東方VSの制作に取り掛かった当時は魅魔は旧作キャラの中では有名な方ではあっても、昔のキャラであり注目度も低かった状況だったので、彼女を大きくフィーチャーすれば我々の方針の独自性を打ち出せると思われたのです。
 ところが……この夏発表の最新作「東方地霊殿」に魅魔が復活して登場するという噂が!!(あくまで噂ですが)これは先鞭をつける意味がなくなっちまう、ということで何とか地霊殿本編の発表前に魅魔を紹介しなければとばかりに今回のプレビューでこのカードを取り上げたわけです。本当は例大祭の直後すぐに公開したかったのですが、制作ペースが遅れに遅れてしまいこんなタイミングになってしまいました。まぁ、時間を取って構想を練ってくれたおかげで、白日君のイラストは素晴らしい出来映えになってくれました。地味な制作と進行のため潜伏を続けるのも魅魔らしいといえるかな?
 さて次はもう一枚のプレビューカード「jigoku」です。



カードの種類:ロケーション
カード名称:jigoku
コスト:1

テキスト:
 あなたの幻想郷のキャラクターがチームアタックするたびに、その上に+1/+1カウンターがあれば対象の対戦相手は1ライフ失い、なければあなたは1ライフ得る。

フレーバーテキスト
 地獄よいとこ、一度はおいで

カードナンバー:TPJ-056 イラストレーター:シミヅ


 ……はい。反省しています。ちょっとはっちゃけすぎました。もうイラストとか私が好き勝手なもの描いたせいで訳分からないことになってますね。一応jigokuらしい意味不明さと混沌状態は伝えられる絵になったとは思っているんですが……
 「jigoku」というカード名は東方シリーズ第1作「東方霊異伝」で魅魔が登場するjigokuルートにちなんでつけています。ゆえに日本語のカードなのに名前は英語でjigoku。「ヂゴーク」とでも呼んであげて下さい。
 霊異伝など旧作で魅魔がいたとされる世界の設定はほとんど存在しませんし、Windows版以降のシリーズでも言及はありません。そして現行シリーズの幻想郷世界には独自の冥界・地獄ができてしまいましたし。とすると、むしろ魅魔がかつて住んでいたヂゴークは彼女が勝手にこしらえた偽物だったのでは?と思ったので、この旧作版ヂゴークを思いっきりパチモン臭い怪しい空間として表現する努力をしてみました。自分では萃香似の一ツ目鬼とか上手く描けたと思うんですが……


 カード的にはオフカーブ戦略のキーカードとして魅魔をサポートするロケーションに上手く仕上がったかな、と考えています。そしてこのデッキのもう一人のボスの手にかかると、このカードも全く違う働きをする仕組みになっているのが何となくお分かりいただけるかとも思います。


 次回のプレビューがいつになるのか、本当に予告できない状態ですが、プレビューで紹介していくべきデッキコンセプトは決まっていますので、第2弾の実制作の開始次第に順次ご報告しようと考えています。多分第2弾の主役デッキのシステムと、そして月の宴で配布した第2弾の広告ペーパーに描いておいた「新たなる挑戦者たち!」の正体(バレバレ?)あたりを計画しています。