Xギャザーvol.1でドラフト

1、はじめに

 レンジャーズストライク仕切り直し第一弾のXギャザー、収録カードの内容も非常に優れたセットですが、開けながら感じたことは今までになくリミテッド(限定戦:ドラフトやシールドなど、製品をその場で開けて出たカードで遊ぶ形式)向きのセット構成だったという点でした。
 これまでレンストでシールドやドラフトを遊ぶ、という試みがファンやプレイヤーの間でもなかったわけではありません。レンストの「引いたカードの約1/3はパワーやコマンドに置かれ、プレイして使用するとは限らない」という基本ルールは、ゲームの当初よリミテッド環境を意識したものとして期待されていましたが、なかなか実際にやってきちんと「面白いゲーム」として成立しうるカード構成のセットは少なかった。リヴァイヴァはややカード種が多すぎ/ストライカー不足だったし、ライダー1,2弾はノーマルのカードパワーやバイク枚数の色偏差が多すぎて……
 9弾から1パック12枚という商品構成に改められたときにこの点を期待したものの、9弾もやや主軸にリミテッドを遊ぶセットには難しい部分があった。しかしXギャザー1ではその問題点が理想的に配慮されていて、かなりブースタードラフトに向いている商品です。現在私は構築戦のないようなど放り出してドラフトの研究していますし、具体的な遊び方の方法も大体まとまってきました。ここでひとまずの成果をご報告したいと思います。


2、ブースタードラフト

 TCGにおけるブースタードラフトの一般的な遊び方はここで概説されています。これまでドラフトをTCGで遊んだことがない方は、ざっと目を通しておくと後を読むのが楽でしょう。

Wikipedia 「ブースター・ドラフト」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%88

 要は所定の方法に従ってパックから出たカードを取り分け、ゲームで使用するカードを選びながら自分のデッキを作ってゆく遊び方です。引いたカードを使うシールド戦と違い、カード選ぶ課程をデッキ作りに相当する戦略の一部として再現している部分に、この遊び方の妙と面白さがあります。

  •  準備:

 プレイヤー一人につき、カード12枚入りのブースターを同じセット配分で3パックと、カード4枚入りの自販機パック1つを用意する(カード枚数合計40枚/人)。どのブースターパックを開けるかの順番は各プレイヤーで一致していなければならないので、それは準備の際に決めておく。

  •  ドラフト(カード配分)の手順:

 .まず各プレイヤーはそれぞれ、自販機パックを開けてその内容をそのまま自分のカードとして取る。(※基本的に取ったカードは自分の手元に伏せて置き、その持ち主も所定のタイミング以外では内容を確認できない)
 .各プレイヤーは自分のブースターパックを開ける。
 .その内容を自分だけ見て、中から一枚だけ自分が欲しいカードを選んで取る。残りのカードは伏せて、隣(一般的には、左回りから)のプレイヤーに回す。
 .全員がカードを選び1枚を取り終えたら、回されてきたカードについて3と同様に取り、隣のプレイヤーに回してゆき、パックにあった全てのカードを各プレイヤーで取り終えるまで繰り返す。
 .1パック分のカード全部を取り終えたら、各プレイヤーは自分がこれまでに取ったカードを見て確認できる。
 .全てのプレイヤーが確認を終えたら、2〜5の手順を次のパック以降も繰り返す。ただし、パックを回す巡回は1パックごとに逆回りにする。
 .全てのパックを取り終えた時点で、各プレイヤーは40枚のカードを取り終えて持っていることになる。これをそのまま自分のデッキとしてゲームを始める。

  •  注:

・ブースター×3(計36枚)にあえて自販機パック1つを加えるのは、とりあえずレンストのデッキ最低枚数には合わせよう、というだけのことです。この自販機パック分を他の方法で取る/配分しても、使わなくても、あまり大きな違いはないと思われるので気分の問題と考えて下さい。セット構成の補正のために、これをランダムに用意せずプレイヤー持参や他のセットから余りを用意して取ってくる、という措置を利用するのもアリでしょう。4枚のパックをわざわざドラフトするのは手間が微妙ですが……
・使用カードが40枚ピッタリ、というやり方はバトルスピリッツのドラフトルールを参考にしています。バトルスピリッツではカードの色はコスト軽減に作用するだけで、ゲーム中プレイできない色のカードというものがない。レンストもコマンドやパワーには色やカード内容に関係なくカードを置けるため、引いたカードのうち使用したいものだけを選んで戦うことができる。この種のルール仕様となっているゲームは概して、必要以上に1回の使用カード枚数を増やさずに最低限のカードだけで遊ぶ方が、むしろドラフト/デッキ作りの才が競われる面白い環境になります。コレなら1回市価千円以内で済むし。


3、ドラフトの遊び方いろいろ

 今回Xギャザー第1弾をサンプルにして2回ほど試してみました。人数を集めることができなかったので、二人遊び用の変則ソロモン・ドラフトを2回テストケースとしてやってみました。この二人用ドラフトの方法は、

・お互いにパックを開けたら、中身を見ずにシャッフルして伏せて山にしておく。
・互いに同時で、山の上から2枚を見て、片方のカードを自分で取りもう片方のカードを相手が取るカードとして渡す(この際、相手に渡されたカードは一度見てもいい)。
・これを繰り返して、全てのカードを二人で2等分する。

 というものです。ちょうど相手のデッキの半分(つまり自分の渡したカード)を互いに知っていて、ゲーム中のカード全体の3/4を見ている、という情報構図が一般のブースタードラフトと近似するようなルールにしてあります。

 2回試した際の私側のデッキは、

・1回目

ビーファイターテントウ ディケイド ブレイド
猛毒鎧将デスコーピオ 仮面ライダーカリス
ピンクターボ 2 シャドーチェイサー 2
  コピーベント
仮面ライダーディケイド バイクル 2
レッドワン 2 バトルジャパン
サイレンダーPM バルイーグル
サイレンダーRM ダイナレッド 2
宇宙警察 ソルジャンヌ
  Vマシーン(Vジェット)
ディケイド アギト マンティスロード
シンケンゴールド ウルフアンデッド
ディケイド 響鬼 害気大臣キタネイダス 2
兜折神 2 害地大臣ヨゴシュタイン 2
舵木折神 十面鬼ゴルゴス
レッドパンチャー 3 巨大バッカスフント

・2回目

ビーファイターアゲハ 少女仮面ヘルバイラ 2
ピンクターボ イカファイア
イエローターボ カメバズーカ 2
ルーター 水のエル 2
レッドターボ 害地大臣ヨゴシュタイン
磁雷神 2 十面鬼ゴルゴス 2
  ヤミマル
  ブラックファング
アビスラッシャー ディケイド 響鬼
ディケイド ブレイド 兜折神
  舵木折神
  キングピラミッダーPF
デンジレッド バイクル
レッドフラッシュ バトルジャパン
ダイアナレディ バルイーグル
ディケイド カブトRF レッドファルコン
仮面ライダーザビーMF ソルジャンヌ
仮面ライダーザビーRF ダイナレッド
宇宙警察 Vマシーン(Vジェット)

 私もTCG全般でドラフトの経験はありますから、かなり良くまとまったデッキを作れたつもりです。また、この2回のどちらも勝負後に感想戦として、互いのデッキを交換してまた遊んだりしましたが、使った感触からは割とどちらのデッキもきちんと機能するレベルに達していた、という印象でした。この辺りもXギャザーが無駄カードの少ないリミテッド向き構成のセットである、という証拠になるでしょう。

 ソロモンドラフトの特長としては、使い終わったカードをまた集めて山札にして、同様の手順で再分配することで数回ドラフトを遊ぶことも可能、という点にあります。ブースターパックがなくとも、余っているレア無し自販機パックを再利用して遊ぶ方法にも使えます。レンスト仲間での余興や大会後の余り時間などに、一度試してみてはいかがでしょうか?


4、捕捉:レンスト限定戦での留意点

 今回Xギャザーでのドラフト(及びリミテッド)について説明しましたが、『なぜ過去のセットに比べて、特に遊びやすいと推奨されているか』など、ドラフト戦を立てる際に楽しめるようにするための留意点をちょっとここで述べておきます。

 基本的にリミテッドはノーマル(コモン)カードによる勝負です。特にレンストは1パック中カード枚数比ではノーマルカードが断然多いゲーム(12枚パック中ノーマル10枚)なので、必然的にノーマルカードを中心にデッキが組まれます。ここで過去のセットに比べ格段にリミテッド向け調整がなされた点は、

 −基本4色(単色)のノーマルカード中で、ストライク/ダメージ能力のあるカードがユニットの約半分を占めている。ユニットが単独でプレイヤーへの基本ダメージ能力を持たないレンストにとって、消耗要員であってもストライカーの枚数(特にSユニット)は一定数が必須です。過去のセットではここまでの高比率がなかった/色ごとに寄っていたために、バランスのいい環境になりませんでした。

 −合体ロボやビークルなど、他のカードに用途が依存しているカードが少ない。もしくはレアカード以上に集中していて、パック中での枚数や出現率は小さい。ストライカーSユニットが一見して多そうなライダーセットは、実際には主要カードがノーマルレア以上だったり、ノーマルカード中ではビークル比率が高すぎたり、しかも色偏差がセットごとに激しい……という問題が多かった(特に緑!)。それが戦隊側のセット特徴と混合されて、バランス良く緩和されたのが今回のポイントだと思われます。

 −多色カードの導入。レンストがパワー/コマンドに置くカードの内容を問わないゲームであるとはいえ、デッキ中の色をある程度揃えてコマンドに置けるようにすることは重要です。その際、デッキ中の実質色キャパシティを広げる意味で、多色カードの存在はリミテッドにおいて大きな役割を持っています。構築戦だと多色コマンドは相手のパワーを加速するためテンポ上の不利益が大きい。しかしリミテッドの戦略はむしろカード損得が重視される世界で、1枚のカードで2色分のコマンドを賄えるなら自分はカード1枚得・相手は1パワー分でカード1枚得、しかしそれでコマンドを確保でき自分の死に札を活かせるのなら、ずっと大きい利益を得られるケースも多い。相手の動きと自分のデッキをよく考えて、恐れずに多色カードをドラフトしてみて下さい。

 この種のリミテッド適性が少ないゲーム/セットでは、何らかの補正ハウスルールを講じない限り無理にリミテッドを試みようとすると、必需カードを集めるためにより多くのパックを開けることとなり、結果として「機能する最低限のデッキ環境」を作るはずがほぼ限定構築戦相当までカードが十分集まっていた、という結果になったりします。それではほとんどドラフト方式で遊ぶ意味がありません。やはりちょっとカードが足りないぐらいの状況を技術で工夫して遊んでこそのリミテッド/ドラフトなのです。


 あとは、Xギャザーがその点で相当配慮されたセットであるとはいえ、若干の使い道の無い/非常に少ない『罠カード』と言うべきものが若干存在します。一応ここに挙げておきますので、レンストやドラフトの経験が少ない人には事前に一言説明しておいた方がいいでしょう。

XG-011 巨大バッカスフント 追加コストの「バッカスフント」がセット中にない。一応ブラスト能力によって出すことは可能。
XG-029 アバレブラックAM 追加コストの「アバレブラック」はスターターのみの再録カード。普通に7パワーでなら出せる。
XG-030 アバレキラーAM アバレキラー」が上記と同様。
XG-036 舵木折神 特徴「ブルー」を持つカードこのセット中で「ブルーターボ」のみ。かなり出しにくい。
XG-040 虎折神 追加コストのない特徴「侍」を持つカードはこのセット中で「シンケンゴールド」(SR)のみ。滅多に出せない。
XG-037 ダイテンクウ XG-039 テンクウシンケンオー 上記の合体パーツ状況から、出すのはまず無理。
XG-081 磁雷神 特徴「忍者」を持つカードはこのセット中で「仮面ライダーZX」(NR)のみ。非常に出しにくい……が、青緑の多色カードなので、実はコマンド用カードとしてはかなり強い。

 実は「ブルー」「侍」「忍者」などは過去のセット中(9弾「蒼九の翼」など)で、ノーマルカードに多数収録されているケースがあります。そこを配慮して、先述のブースター方式での一部パックや自販機カード分を、対応したセットから用意したりすると、より使用不能カードの枚数を減らせるかもしれません。私もこれから今後のセットや、過去のセットのリミテッド適応性については暇をみて分析を進めてゆきたいと思います。