今日のバトスピチャレンジカップin土浦

 今日は土浦にバトルスピリッツチャレンジカップに行ってきました。バトルスピリッツバンダイが久々に作るオリジナルコンテンツのTCG(初代ドラゴンドライブ以来なら約10年ぶり)で、私的には今年の注目新作TCGの筆頭のひとつです。
 バンダイは以前はTCGメーカーとしては困ったちゃんな会社で、自社で豊富に抱えるキャラコンテンツの利用・玩具会社としての経験に反映された独創的なコンポーネント・全国に存在するカードダス自販機を始め広範な流通経路など、多くの特色や利点を持つ立場でありながらゲームデザインが下請けスタジオ頼みで微妙な出来のケースが多いという、ゲームメーカーとして脛に傷持つ巨人という感がありました。
 過去に『ガンダムコンバット』『エヴァンゲリオンTCG』『SDガンダム Ggeneration』『犬夜叉カードゲーム』』『ドラゴンドライブ(旧シリーズ)』など、独創的なアイディアに基く斬新なゲームデザインを提示したときも、細部のバランスの練りこみや展開の舵取りの失敗で世間の評価を得られず、とかく「適当な版権を利用していい加減なキャラゲーを乱造するメーカー」という印象が先行してしまっていたため(実際にそういうゲームもありました)苦戦を続け、結局MTGの亜流商品であるガンダムウォーに依存し続けている状況に80年代に数多くの子供向けボードゲームの良作を生んだ歴史を重ねて残念に思っていた人も多かったと思います。
 かつてのバンダイTCGの状況を最も如実に表してしまっている作品が『ガッシュベル The Card Battle』だといえます。本型のカードファイルを利用する対戦ゲームブック的なアイディアが玩具的な発想と原作漫画の特色が結びき優れた売りになったゲームでしたが、アニメ化による人気の爆発に対してルールのサポート面の遅れが目立ち、結果として長い間一部のプレイグループによる恣意的なルール解釈が横行し、デザイン側がコントロールを取り戻した頃には作品のブームも去りプレイヤーの多くは環境のバランスの悪さに辟易してゲームを止めていたという結末に至りました。老舗のアナログゲームと玩具の会社らしい発想の柔軟さを生かせない製作体制の旧弊さが問題であったとも言えるでしょう。


 しかし2006年の『レンジャーズストライク』から状況は一転します。レンストは以前のバンダイとは比べ物にならないほど優れた現代的なデザインと洗練されたバランスを持つゲームで、多くのオリジナルアートを収録したイラストはキャラクター商品としても望みうる最高水準のものでした。レンストは初動の展開でTCG市場におけるバンダイの悪名と戦ったため苦戦を余儀なくされましたが、地道な展開・販促・サポートとゲーム性重視の方針の継続により今では国産TCG界に確固たる地位を築くまでに成長しました。そしてレンストの成功がバンダイ、ひいては他の国産TCGメーカー各社にも販売戦略の発想転換を促したのです。
 つまり、「やはりゲームデザインの良くないTCGは売れない。きちんと売れて欲しいならゲーム性を努力して高めないと」という極めて普通のテーゼなのですが、実は2000年代の国産TCG界はずっとこの点が忘れられていたのでした。
 リニューアルしたバンダイのゲーム性重視のデザインは、以後多くのTCGに反映されています。中にはそれなりの世間の認知と成功を得られたもの(『デジモンカードゲームα』『サンライズクルセイド』『ジョジョの奇妙な冒険ABC』)もありましたし、一方で商業的に成功できなかった残念な作品(『結界師カードゲーム』『デルトラクエストカードゲーム』)もありました。しかし、そのどれもに現代的な国産TCGのハイレベルなゲームデザインが反映されており、従来の水準を遥かに凌ぐかなり遊べるものになっています。主力商品以外にも一貫してここまでのリソースを投入する姿勢はかなり評価していいでしょう。


 そしてそのバンダイが満を持して発売したのが、この『バトルスピリッツ』です。MTGデザインチーム出身のデザイナーの招聘、サンライズとの提携によるアニメ化・漫画展開、全国レベルでの販売攻勢など、これまでのバンダイTCGのノウハウを全て投入した自信作。8月中旬から各地で体験会は行われていましたし、雑誌「ケロケロエース」の今月号(10月号)にはそのまま遊べる体験用デッキが付属しているなど、優れたゲーム性を前面に押し出してアピールする姿勢はその自身の表れでしょう。実際遊んでみてその価値のある大変面白いゲームに仕上がっているので、機会があればできるだけ多くの方ぜひ体験してみてもらいたいと思います。