ミカファールコンボ攻略序論

 私が書く書くと言いながら時間を取れないでいるうちに、デザイナーのマイケル・エリオットさんがコラムで攻略法と取り上げています。

  • 『マイケル・エリオットのデザイナーズルーム』

 2008年12月28日:How do you talk to an Angel?
 〜エンジェルととのように話したらよいですか?〜
http://www.battlespirits.com/feature/column/michael.html

 これはこの手のコンボデッキに対する、基本的な対策法とその理念を簡単にまとめたものです。TCG知識・技術の基礎力のある人は、もうこれだけで何をするべきかはっきり分かってしまうかもしれません。
 しかしバトスピからTCGを始めた方には、やはり実際的なプレイングの説明や指針がなければピンと来ない部分も多いでしょう。エリオットさんはこのゲームのチーフデザイナーですから、自分の経験と知識によっていくらでも助言も必勝法も出せる状況でしょうが(大体彼がそのようにデザインしたゲームなのですし)、それを具体的に言ってしまうのはアンフェアな立場にあります。だからコラムの内容は「一般のTCGでの常識と知識から、今回のバトスピのケースに当てはめられる範囲の概説」に留まっているのです。
 以下の文章は、私がプレイヤーの立場から書くものなので、もう少し具体的な戦術に言及しています。初心者の方はここに書いた心得を意識してプレイすれば、ある程度ミカファールコンボデッキに立ち向かうことができます。ですが、重要なのは「〜をするんだ!」という行動指針そのものではなく、その理由となる部分です。『理由』の部分は私が自分でミカコンボを回し、調整し、仲間の速攻やフリープレイのミラーに勝ちもした経験からの分析で、デッキそのものの構造の観察から生まれた見地です。
 今はこの程度で勝てたとしても、いずれミカコンボ側のプレイヤーもプレイングの技術を磨き、また対抗してきます。そうしたとき、単純な攻略法ではなくその背後の理由を知っていれば、その場で考えることで新しいアドリブの解決法をまた編み出すこともできます。その思考力を磨くことが、TCGの初心者を卒業し『自分の実力で勝った』ことを実感できる段階に立つ助けになるはずです。

『運命は逃げ回るものじゃない
 立ち向かうものでしょう?』

 ―般若沙良、「バード 砂漠の勝負師」(青山広美竹書房

 それでは皆さん、用意はいいでしょうか?


『それほどのモンスターを
この手で葬り去る
 まさに究極のエクスタシー』

 ―バード、「バード 砂漠の勝負師」


 1.コンボ前:
 まずミカファールコンボ側のすべきこと

 ますミカコンボの戦略のおさらいも兼ねて、相手であるコンボデッキ側が何を行ってくるのか、そこから対策と攻略法を見てゆきましょう。コンボ開始前に倒せてしまえば簡単なものですが、こちらの攻撃が結果的に相手のコンボ開始を利するときだってあります。あいての思惑を知った上で、きちんと弱点に有効な痛打を入れる方法を考えましょう。

 1.A:ミカファールを出す

 まぁ、当然の最重要目標ですね。通常Lv2のミカファールを出すことでコンボが始動します。では出すためには一体何が必要なのか具体的に見ると、

  1. 9コア分のコストが払える(7コスト+Lv2のために2コア)
  2. 手札にミカファールを引いている

 になります。コア数についてはターン数で先手6ターン目、後手5ターン目です。この時点で軽減を数えていないのは、黄ネクサスがあるのでない限り、軽減を発生する黄のスピリットの上には必ず1コアが載っているからです。ですから相手の総コア数を数えることが、どのくらいミカファール降臨に近づいているかの指標になり、これに無自覚にダメージを与えライフ分のコアを与えてしまってはまずいのです。ラストターンに相手のライフを一気に奪うまでは、相手の総コア数を8までに抑えておけば一つの保険になります。
 しかし実際の実戦ではずっと早く(私の場合たいてい後手3ターン目、先手4ターン目あたり)に出します。それができる秘密は、デッキに大量に積まれている黄の0コストスピリットです。先に展開した黄0スピリットの上からコアを払ってミカファールを出せば、コアを使っても軽減は働くため1体につき1コスト分安く出せます。また軽減無しでイビルオーラを撃っても差し引き1コア増えるので、同様の効果です。つまり『これらのカードを手札から1枚捨てることでコストを1安くできる』という選択肢があることは覚えておいて下さい。

 しかしこの行動はコンボ側にとっても諸刃の剣です。だって理論上は後手1ターン目から出せるのに、だれもその可能性を追及しない。というのも、ドローの項で詳しく説明しますが、ミカコンボデッキは本質的にドローソースが足りていないコンボデッキで、とりわけミカファール召喚時効果(とタイムリープ)やマジックブックのドローでかなりの枚数を引くことが必須なのに、これらのドローは撃ったときの場/手札のカード数に依存しているからです。
 ミカ降臨後に継続してコンボを回してゆくには、マジックブックでの3ドローないし、少なくともLv2ミカファール以外に2体は黄スピリットが用意できないと厳しい。それを達成できるコアとカードをコンボ開始時にから速やかに用意する目算があるかどうか、コンボ側がタイミングを計る際に気にしているのは常にそこです。
 つまりミカ降臨後に回せる十分なカードが無いまま無理にミカファールを出すと、きちんと手札を補給できず後で出すよりもずっと負けに近づくケースは多い。しかし今出して無理にでも防御マジックを0コスト撃ちしなければ生き延びられない状況は十分有り得ます。ミカを出さずにマジックを撃ったって、その場しのぎですし、大体撃ったマジック分1枚の手札をさらに失わせてます。こうなってしまえば、そんな死に体のコンボデッキはもう敵ではない。
 だから相手の捨て札、場に出したカード、プレイしたマジックをよく見て、相手の手札の中身と枚数を推測し(デッキの大まかな組成が読めれば確率的にも目安がつきます)、相手が何ターン目にミカファールを出す(出して回せる限界ライン)と踏んでいるのかを、コア数に加えて推測するべきです。常に相手にとってかつかつの分しか、ダメージによるライフコアは許さない。そしてその直前ターンでこちらの全力攻撃が通れば、回る前にきちんと倒せますし、全力攻撃を防ぐためにカード(防御マジック、ブロッカーのスピリット)を消費すれば、ミカ降臨ターンはまた遠のきます。
 相手の動きをきちんと見て、全体的なリソース量を意識して、それを攻撃しつつ次々と奪っていけば、たとえ一見うまく防御できているように思えても、コンボ側はどんどんジリ貧になっていくのです。フレイムテンペストでも、サイレントウォールでも、撃ちたければ勝手に撃たせればいい。その分手札のマジックブックのドロー能力は落ちてゆきます。要はそれに比してこちらが極端に損をしてなければいい。攻める側としてはできるだけ相手をどんどん苦しめてやりましょう。

 
 1.B:ミカファール以外のスピリットを出す

「手の内は分かってんだ
 ちゃんと考えて出していけば――
  妖精を見つけられる」

 ―藤崎佑助(ボッスン)「SKET DANCE 第34話『妖精みつけた』」(篠原健太、ジャンプ・コミックス)

 通常、ミカファールコンボデッキに入る(ミカファール以外の)スピリットは大きく分けて3種あります。

  1. 黄の0コストスピリット
  2. 場に出す/出しておくことでコンボを回す助けになるもの
  3. 相当の何か

 1は分かりやすいですね。ミカファールの動きを補助するために入れている、0コストで出せる黄のスピリット、コリスタル、ピヨン、妖精ターニャの3種です。前述のとおりこれらはミカファールを出す際のコストに使えますし、コンボが回ってからはそれを継続するドローの能力にも関わってきます。最も重要な役割を持つスピリットであり、安定したBPを持つコリスタル以外は勿体無くて必要が無い限り場においそれと出せやしません。マジックブックや他のカードの軽減、それがギリギリでしょう。
 うっかりこれらを並べ始めるようなミカコンボを楽々狩れる時のことを考えて、プテラトマホークオルカリアメタルディー・バグ髑髏騎士ズ・ガインなどを入れておくのも手です。こいつらは別に後半戦の別の用途でも十分役立ちますし、前述の攻撃戦術『攻撃しながら相手のリソースを削る』のに最適です。

 2はペンタンチャウートリックスターグリプ・ハンズなど(あるいは各種のネクサスもここの分類でいいかもしれません)それ自体が持つ能力によってコンボの回りを補佐するカードです。
 これらのスピリットは、当然何らかの意図をもとに相手のデッキに入れられています。それが何であるかは、一目瞭然だったり、特定の状況に対処するための保険だったり、実際にデッキを自分で回してみないと分からないレベルの用途だったりすることもあります。(稀に『ブラフ』という可能性もありますが、普通コンボデッキにそんな余裕はありません)しかしどれにも共通しているのは、放って置けばある程度の危険度(相手に有利をもたらす)があり、置くのに相手はコストがかかるということです。

 用途は知識と経験からある程度まで推測できます。それを考えて、十分危険だと思えるのなら、相手が対応できないタイミング(こちらのメインフェイズ中、アタックフェイズでの最初のアタック時効果など)でこちらから先に除去してしまうべきでしょう。
 この除去は別にドリームリボンなど手札に戻させるだけでも大丈夫です。というのも出すのにコストを払う必要があるので、序盤戦で戻されたカードを後で出しなおすのはコストの浪費であり、その分相手の他のリソース・行動を制限されますから。よほどそれが必要で無い限り、相手はコストを二度払いで効果を得るのを諦めるでしょうし、そうなれば実質除去と同じです。

(ずっと前にこのブログで予告しつつ、説明する更新ができてない戦略概念ですが、要は「相手の『テンポ』を奪え」ということです)

 3をもう少し厳密に定義しておきましょうか。「上記の1,2に当てはまらず、相手の攻撃能力に対処するために入れているスピリット全部」です。これらのカードはデッキに絶対必要な要素ではありません。速攻ビートやミラーマッチなど仮想的に対応するために入れている要素です、が、本質的にデッキの贅肉です。私が目に耳にしてきた例を挙げていきましょうか。マッチュラライオライダーニーズホッグドラグノザウルスラングリーズジャグリーンマッハジースフィアロイドなどなど。
 本来本質的に必要のないものなので、デッキの回りにほとんど寄与しません。そのくせコストはかかります。はっきり言えば、許容できるレベルのコスト(0〜2ぐらい?)の中には結構便利なカードもあります。しかしそれ以外のカードは、出せるのは相当余裕があるか相当酷い手札かの、他に何もすることが無いときだけです。
 従ってこれらのスピリット(特にコストの重いもの)を出してくるようなら、一般論としてはもう強気でどんどん(でも前項の原則は守りつつ)攻めていけばいいんじゃないでしょうか。相手の手札が弱いならさっさと殴るべき。相手の手札が強ければそれこそ今のうちに相手にダメージを与え、リソースを削らなければ危険は増してゆきます。そしてそもそも相手が弱いのならさっさと殴り殺してしまえばいい。
 真面目に考えれば、これらのスピリットがピンで存在する状況なんて、速攻ビートもコントロールも楽々抜けていける程度の防御に過ぎません。デッキそれぞれのやり方で、片手間に潰していけばいいんじゃないでしょうか。本当の脅威は全く違う場所にありますから、むしろそっちに注意を心がけましょう。

 一点だけ注意すべきことがあります。それはこういった壁スピリットのです。ミカコンボには多くのマジックが積まれていますが、その中でも重要度の高いカードが集中している色がいくつかあります。その色のスピリットが壁である場合、マジックへの軽減効果を期待して2の用途を意図していることが考えられるのです。
 意図していなくても、ちょっとした急場においてその軽減が防御マジックを1,2手早く撃つことに使われる可能性があるので、危険な兆候が見えたら積極的に除去を狙うことも必要です。

 1.C:マジックを使う

 ミカファールデッキには各種のマジックが入ります。その数は、大体24枚前後でしょうか。基本的にマジックであれば入れられるだけ入れて割合を高めるべき(ミカファール・マジックブックのドロー効率を上げるためです)なので、デッキ総枚数40枚からスピリット・ネクサスに割り振った15〜18枚を引いた数になるでしょう。
 ですがこの多彩なマジックも、役割の性質はほぼ2種類だけです。

  1. コンボを回すためにカード(もしくはコア。広く言えばリソース)を得るもの
  2. 敗北しないために撃つ防御用のマジック

 1のうちドローするマジックは可能な限り入れているはずです。よく見るのはストームドローダブルドローマジックブックタイムリープという構成でしょうか。これだと固定枚数で引ける能力は3×3+2×3=15枚。山札の残りを、他のマジックとミカファール自身で引ききるのは一枚当たり約3枚半のノルマですからかなり厳しい。この条件を色々工夫してコンボを回すのはミカコンボデッキの最初の課題です。
 これらドローマジックのうち最も重要な2枚はストームドローマジックブックです。

 まずなぜストームドローが重要なのか、これを説明することで攻略の糸口にしてみましょう。ストームドローが重要なのは、そのコストの安さにあります。
 ミカファールを出す項でも触れたように、コンボを回すにはリソースがある程度時間を経て増えるなどして、開始可能な状態になる必要があります。よく考えて下さい。ミカファールを手札に引いていなければそもそもコンボスタートできないんです。そのために3枚と最も多くのカードアクセスを持つストームドローが重要でもあるんですが、ミカコンボの弱点は『ドローマジックの全てがメインフェイズにしか使えず、ほとんどのコストが重い』点にあります。
 実はミカファールデッキのドロー能力は、早いターンにミカファールを1枚引いてくる(山札40枚中に3枚)のには十分なカードが揃っています。まぁ、あれだけ積んでりゃねぇ。ですから熟練したミカコンボプレイヤーにとって「引かないから負けた」ということは滅多に無い(むしろ引きすぎるくらいかも)。実際には『やろうと思えば引けたけど、そのコストを払える暇を相手がくれず、ドローマジックを撃てなかった』からミカファールが引けない(もしくは出せない)のです。
 相手の攻撃能力を意識すれば、そしてこちらがコンボデッキだという事を相手が知っていると思えば、相手の絶え間ない攻撃にきちんと対応するための手段が必要です。そのための防御マジックですが、それを撃つためには常にコアが必要であり、防御に回すコアを温存しようとすれば必然的にコストの重いドローマジックは使えないのです。ストームドローはコストが『同じターン中に、他の行動を行いながら使える』ほど安いから最重要カードなのです。
 その点を分析すれば、攻撃側も常に攻撃戦力を用意して、相手にコアを無駄遣い・溜め込み損させればコンボの始動をどんどん遅らせられることが分かると思います。私がさきほど「防御マジックはどんどん撃たせて構わない」と言ったのはこれが理由です。サイレントウォールやマインドコントロールの4コアはダブルドロー1回分と等価。フレイムテンペストなんてどのドローマジックより高い。しかもこれらは序盤1ターン分のコア数に匹敵し、それを無駄遣いしては実質ターンを飛ばされたのに等しい。さらに使えばマジックブックのドロー能力もその分落ちます。こちらが失う物にこだわり過ぎずに、相手の浪費を引き出すべきです。

 ここでコンボ前から枚数を引けるカードであるがゆえに、マジックブックが次いで重要なドローマジックなのです。
 マジックブックの使い時というのは、コンボ前なら実は出来るだけ早いターンだったりするケースは多い。なにせノルマは3枚ドローだし大変。軽減が使えれば(ということはその分スピリットを引いておりドロー効率は悪いわけですが)コストも手頃です。まだライフが残っていれば、ライフコアから防御マジックを撃てる可能性に期待できますから、全コア使って撃つこともよく見かけます。しかし、この攻略法をここまで読んできた皆さんなら、これがコンボ側も本当に覚悟を決めた一手だと分かるはずです。
 相手の信頼にお応えして、存分に料理してあげましょう。
 いい加減プレイヤーの皆さんは気づいているでしょうが、有名なカードキングダムのミカコンボ動画だって、シェイロンデス側がきちんと殺す気で攻撃かけていれば勝ててるケースでした。あんなにカード使い放題で好き勝手されたのは、攻撃側が全く攻撃のプレッシャーをかける気がなかったせいであり、相手の正体が読めずに疑心暗鬼と恐怖に捉われて攻撃できない初心者プレイヤーとほぼ同じ立場でしょう。でも最初から攻撃を放棄しているのは、戦う前に負けを認めたのと同じです。全く攻撃しないよりは、常にフルアタックの方がずっと良く(さすがにそれをされるとミカコンボも一定の確率で勝てないケースが来ます)、注意深く殴ればもっと勝てます。

 2.コンボ中:
 実は遊んでいる暇は無い

 とはいえ必殺のアタックを上手く凌がれて、相手にターンを許してしまいミカファールを出されることも十分あります。これまでの攻略法をきちんと念頭に置いていても、熟練したミカコンボプレイヤーは(私自身でさえ)いくつもの秘策を残しており、紙一重で逃れるために全力を尽くします。大体これでいい勝負に持ち込めないのなら、そもそもそんな勝ち目の無いミカファールコンボデッキなんて誰もやりませんよ。
 ですから、熟練したプレイヤーにしぶとく喰らい付く根性を身に付けるために、きちんとコンボ中・コンボ後の攻略法も身に付けておくべきです。

 相手のコンボが始まったら、しばらく遊んでる暇はなくなります。きちんと相手の行動を一手づつ観察して、今相手のコンボ状況がどのようなものか読みとる努力をすべきです。
「そんなの分かりっこないよ!」と思うかもしれません。しかし、このターン中に相手を倒すのにほぼ安定なリソース差(残デッキの7割以上を引く)をつけられるまで回られるまでは、次のターンの反撃で勝てる勝算は十分あります。そして、これまで述べてきた攻略法をきちんと行っていれば、相手のコンボだって滅多にこちらの反撃の及ぶ範囲から逃れられるほど続けることはできないのです。ミカコンボデッキのコンボ回転の継続は、開始時の残リソースに依存しています。それをきちんと削れていれば、たいてい途中で止まってしまう。ですから、もし回られたとき相手への反撃の機会を維持するためにも、やはり相手をコンボ前から消耗させるべきです。

 ミカコンボの途中停止は、ドロー能力とコアの枯渇によって起こります。コアなら次のターンにリフレッシュしてまたもう少しコンボを進められることは確実ですが、ドローの枯渇なら相手が次のドローソースを引くまで1,2ターンの猶予が有り得ます。すなわち追撃のチャンスです。これまで注意深く観察して、あいての手札を推測ておいた知識が生かされるのです。
 相手は今や何枚もの防御マジックを手にしているかもしれない。既にコンボ中に何発か撃たれてこちらの場は一掃されたかもしれない。しかし、大部分のリソースを消耗して泥沼にいるのはこちらも相手も同じです。どんどん泥仕合といきましょう!積極的なアタックのプレッシャーをかけて、がんがん相手にカードを使わせましょう!その防御壁が破れたときこそこちらの勝利なのですから。
 この段階ではもう相手もどんどん攻撃してきます。なにせ防御策のあるうちにできれば先に勝っておかないと、後に残る保険と山札はどんどん減っていくのみです。とすれば、こちらにも別の利点が生まれます。あいてがアタックしてくるということは、こちらのフラッシュタイミングが来るということです。コンボデッキとこちらのデッキ、手の内に隠したコンバットトリックの数なら断然こちらの方が豊富です。次のターンに今引きでスピリットを得られる可能性だってこちらが多い。そもそも速攻ビートダウンにしろコントロールにしろ、ミカファールコンボに対策できる地力のあるデッキは、この手の泥仕合にも元々十分強い構成のはずです。

 一つだけ、「テンポアドバンテージ」の授業に先立って重要なアドバイスです。

「バトスピのビートダウンの展開の基本は、『質から量へ』。
 まずは質の高いスピリットを先攻させて、数を並べるのは最後でいい。
 そして2枚効力のカードは最後まで手元に残しておくこと」

 私の紫速攻ビートを例にとれば、最初の1,2ターンは3コストのスピリットを1枚づつ並べるように動き、余ったコアはその上に載せておく。とっさの軽減が必要なとき以外は、フォッガー・スカルデビルは全力攻撃の時まで場に置かない。そしてグリプ・ハンズは最後の1枚に取っておけ(軽減が少ないため、効率を考えれば結局手札に最後まで残るように、実は意識してデッキ構築してあるんです)。とまぁそんな具合です。これを意識すれば相手の防御マジックにまとめて刈り取られる危険も減るはずですし復帰も容易です。

 
 3.コンボ後:
 最後のチャンスに賭けて

 途中停止しながらであっても、相手がどうにか山札を8,9割方引く所に行き着いてしまうと、大量のカード差(それも主に場に並べた0コストスピリット)によって、かなり分は悪い状況になります。でも、まだチャンスは残っている。
 途中停止中の追撃が十分なら、両者グダグダのままここまで来ても泥仕合が続いている場合もあります。その場合最後の最後まで気を抜かずにファイト!!

 リソース差をつけられていたら……でも一発逆転のチャンスをわずかでもこの時にも残しておくデッキ構築は可能です。それは除去によって相手のLv2ミカファールを無力化してしまう戦術です。まぁこれがコンボ中の段階でも決め手になるケースは多いので、少しは積んでおくといいでしょう。

 撃つ状況が状況だけに、満足なコストが払えるか不安があります。せめて軽減を得られるよう、出来る限りデッキのキーカラーに合ったものを積む方が、コンボ前の戦略でも有効に利用できます。赤なら要塞竜ギガプテラトマホークなどのスピリット。ドラグノ祈祷師で拾う事もできますから都合がいい。紫ならポイズンシュート髑髏騎士ズ・ガイン。Lv2ミカファールからコア1個抜くだけで十分なことは多く、早く相手に回されたいい手札のケースほどコアの不足からそういうケースが見られます。白ならドリームリボン/チェストメタルディー・バグ。緑には使える除去がほとんどないですが、手札に神速スピリットを残していれば、相手の読みを大きく狂わせるチャンスを産みやすい。
 最後まで希望を捨てず、真剣に勝負することが相手への誠意でもあります。きちんと相手の動きを見て、チャンスを拾う努力を怠らないで下さい。

『予測不能のことは
いくらでもあった
それでも奴の息の根を
止めるためには
自分の力を
信じるしかなかった』

 ―バード、「バード 砂漠の勝負師」

 4.おわりに

 これまでの記述に加えて、ちょっと具体的なデッキ構築の指針を書いておきましょう。

  • マイケル・エリオットさんも指摘されているように、はビートダウン戦略においてミカファールに抗しやすい傾向があります。それはドロー効果など2枚効果(1枚で2枚分のカード効率を持つカード)が素で多くデッキに入るからです。この持久力の高さが、コンボ前での展開の安定性と同時に防御マジックに対する耐性にもなります。
  • 対して、が手札を増やすドロー能力に弱いため、ちょっと不向きという面が確かにあります。しかし、こっちの2色は逆にフラッシュタイミングでのトリック要素や除去に強く、ミカコンボの思惑を潜る激しいラッシュを展開できる力があります。白は攻撃と同時のコア加速、相手のテンポを奪う攻撃によるリソース戦略。緑は素から強いビート能力を補うトリック要素をそれぞれ伸ばせば有望です。

 これらの傾向を踏まえて、多色構成を考えるのも十分強力な戦略です。私の細いオンライン情報ソースでも、紫緑、赤紫、黄緑など、なかなかユニークな対ミカファール戦略をいくつも聞いています。
 大体私が初期の頃「ミカファールコンボはてんで回らないお笑い種だ。後手3ターン目始動だってろくに安定してない」と怒りつつ愚痴ってた(今はなんとか後手3ターン目で安定して回せます)のは、そもそも第1弾発売の最初に私が『相手が何を出しても4割は先手第3ターンで勝っちゃう緑白デッキ』を作ってしまったからでして(汗:土浦わんぱく小僧とおもちゃのぶんぶくでお会いした方々はそれを見たことがあるかと思います。初期型のレシピはこのブログでも公開済み)、そんな者の目には「早くて3〜5ターン目には始動できる即死コンボ」なんてバトスピにおいて実用的な戦略とは言えないわけです。
 今は他のデッキの可能性を研究中で、白緑戦略はそのままほったらかしですが、あれはあのままで今でも十分強いでしょう。そんなに3ターンキルはできなくなっているでしょうが……まぁもしミカファールコンボが先手3ターン目で相手に関係なく安定して回れるようになれば、私のデッキとジャンケン勝負になってしまうので、その時には禁止カードを真剣に考慮すべきかな。

 ……話がちょっと逸れて自慢げになって申し訳ないです。邪くんは私が渡したあのデッキをベースにバトスピを始め、それにマッチュラ等を加えたコントロールシフトのデッキをメインにやっています。
 ミカコンボデッキには速攻デッキしか対策がないように世間では語られていますが、私の攻略法『攻撃しながら相手のリソースを削る』は、実はコントロールデッキの方が向いています。スピリットによる攻撃は大抵どんなデッキでもできる。リソースを削る戦術は本来コントロール的で、ビートダウンを補うために速攻デッキが利用しているものです。ですからコントロールデッキこそが対ミカファールは十八番という見方もできます。

 バトルスピリッツは非常に良くデザインされたTCGで、今のところどんな局面にも十分な戦略的可能性と自由度がある、と私は確信しています。皆さんも、この拙稿を踏み台にしてミカファールデッキを破り(もしくは今のデッキを越える自分の新しいミカファールデッキを作って)、自分の技術と知識を信じる自覚を持ったTCGプレイヤーになって欲しいと私は願っています。


『ギャンブルとは
未来の可能性を信じて
自分の全てを捧げることだ』